【後味の悪い話】乃南アサ 「坂の上の家」



317 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/08/11(金) 17:24:02
乃南アサ 「坂の上の家」

主人公は、気のいい若夫婦が経営するレストランの、アルバイトの女子大生。
その店には、いつも閉店間際にやってきてはダラダラと長居する、大変迷惑な家族客がおる。
家族仲は傍目にも冷えきっており、その4人のあいだにはおよそ家族らしい会話もなく
彼らは食事の最中も黙ったまま、本ばかり読んでいるのだ。
その家族のことを、主人公はいつしか陰で「悪魔の家族」と呼ぶようになる。

ある日街を歩いていた主人公は、「悪魔の家族」の長男(中学生くらい)が
同級生からイジメを受けている現場を目撃し、さらに次男(小学校低学年)が
遊び相手もおらずデパートの階段に座り、スナック菓子を
つまらなそうに食べているところを見る。
『あんなに幼い彼らが、私よりもずっと年をとった疲れた目をしている・・・』
と、主人公は何となしに嫌な気持ちになる。
また、その街では最近不審火事件が相次いでいるらしく、オーナー夫婦も不安そうな面持ち。






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318 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/08/11(金) 17:26:38
数日後、昼間のレストランに、数人の主婦を連れた「悪魔の家族」の妻が来店する。
彼女たちの話から、悪魔妻は学校の教師をしているらしいこと、
また「悪魔の家族」が、店からも見える坂の上に建つ、立派な新築の家に
住んでいることなどがわかる。
素敵な先生然として主婦達に子育てのアドバイスをする悪魔妻に、主人公やオーナー夫婦は
『実の息子たちの無言のSOSにも気付かないで何が素敵なおかあさん先生だ!』
と憤る。

319 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/08/11(金) 17:28:39
それから幾日かたったある晩。閉店間際に、最近では家族ばらばらに到着するようになった
「悪魔の家族」が来店するが、次男がなかなか現れない。
遅れてやっと到着した次男はめずらしく晴れ晴れした表情で、長男に
「ばっちり大成功だよ、お兄ちゃんっ!」と声をかけ、長男も
「よくやったな、上出来だぞ」と返事をする。
初めて彼らの家族らしい会話を見た主人公は驚きを隠せない。
「早く注文して食べちゃいなさいよ」という悪魔妻に、
「いっらないよっ」
「僕も、いらない」
と返す子供達。
「あらそう。じゃ早く家に帰って、お風呂入って・・・」
悪魔妻が言い終わらないうちに、兄弟は顔を見合わせくすくす笑いだす。
つられて笑顔になりながら悪魔妻が窓の外を見ると、坂の上から煙が上がっている。

「・・・おい、あれ、俺たちの家からじゃないか」悪魔父が茫然とつぶやく。

「ぼく、ちゃんと火、つけられたよっ」
「ああ、何度も練習したもんな」
兄弟は笑いながらしゃべり続ける。
「これでぼくたち、冒険旅行に出られるよね?」
「ああ。でもお前は無理だぞ、刑務所に入れられるんだからな。冒険旅行は僕1人で行くんだ」
「え?なんで?お兄ちゃんがやろうって言ったんじゃないかっ!」
「僕、知らない。」
「ずるいよっ!」

主人公の目に、悪魔夫妻が坂の上に向かって駆け出す様子が、
スローモーションのように映った・・・

おしまい

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[ 2015/12/17 18:50 ] 小説 | TB(0) | CM(0)
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