12 名前:本当にあった怖い名無し :2008/08/12(火) 21:11:12
既出だろうが、ヘッセの「少年の日の思い出」を。
蝶を採集することを趣味としていた主人公の少年エーミールは
貧しい家庭に育った為に貧相な道具と展示箱しか持っていなかった。
ある日エーミールが自作の標本を近所に住む少年(裕福だがやや陰険な性質)
に得意げに見せると、
その少年は「羽の一部が痛んでいる」「触覚が折れている」などと
細かく欠点をあげつらい、エーミールは意気消沈してしまう。
それからしばらくして件の少年がとても珍しい蝶を捕らえて標本にした、という話が広まり、
エーミールはその蝶の標本を一目見せてもらおうと少年の家を訪れる。
折り悪く少年は留守にしていたが、どうしても蝶が見たかったエーミールは少年の部屋へ忍び込み、
机の上で処理を施されている蝶を発見するが、ここで心に魔が差す。
その蝶をポケットに入れて持ち去ろうとするエーミール。
しかし少年の家を出る寸前で思いとどまり、蝶を元通りに返そうとポケットから取り出すと
見事だった蝶の標本は見る影もなくボロボロになってしまっていた。
無残な標本を机の上に置いて逃げ去るエーミール。
家に戻ってから不自然な挙動を母親に見咎められたエーミールは、結局は母に
自身のした事を告白する羽目になる。話を聞き終えた母親は彼にきちんと詫びるように申し付け、
エーミールは彼の家を訪れて一部始終を話し、謝罪する。
彼はエーミールの話を黙って聞き終えたのち、声に侮蔑を滲ませて
「そうか、つまり君はそういう奴なんだな」と断じる。
エーミールは再度謝り「僕の蝶を全部あげる」と訴えるが、少年は冷ややかに
「君の蝶なんか僕は全部持っている」
「おまけに今日は君がどういう風に蝶を扱っているのか、良く知ることができた」
言葉も無く少年の家を後にするエーミール。その夜、エーミールは自分の大切な
コレクションである蝶の標本を、ひとつ残らず潰して捨ててしまった。……という話。
勿論これはエーミール側に言い訳のしようもない非があるのだが、
主導権を握っている人間に特有の冷徹極まりない言葉の鞭がどーにも厳しい。
主人公は大切な趣味とそれにかけた情熱まで全否定され、しかもそのことへの反論すら許されない状況。
「謝って済んだらry」という言葉をこれほど判り易く伝えてくれるお話は貴重だと思うw
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